花信風法話


花信風法話 「心に花をさかせよう」
永観堂法主 中西玄禮


84 柳絮(りゅうじょ)飛ぶ

   新天地拓くごとくに柳絮飛ぶ   遠藤睦子

 春四月。柳が葉を伸ばす前に、白い綿毛のついた小さな種が春の風に乗って空に舞います。いかにも春らしくて、心をのどかにさせる光景です。 初々しいところは新入社員に喩えられるでしょうか。
 俳句では、この柳の白い綿を「柳絮」と呼んでいます。柳絮の白い綿毛が静かに流れる中に身を置くと春うらら。些細なことは一切消え去って、 情感に満ちたひと時がこころを安らげてくれます。しかし、柳絮に込められた柳の親ごころは、そんなのんびりしたものではないようです。 それは、新天地を求めての命がけの出発なのだそうです。
 柳は好んで石のゴロゴロした、カンカン日の当たる土地に根を張って樹林を作ります。柳絮は荒れ地を緑化するパイオニアだと言われているのです。 冒頭の句は、そういう柳絮の景色がうまく詠まれています。この時期は、学校を卒業した若者が社会人として旅立つ時期であり、新たな出会いの季節でもあります。 希望に胸を膨らませながらも、不安をかかえていることでしょう。柳絮のパイオニア精神に学んで、生き甲斐のある自分の道を見つけてほしいものです。 その為の証しとして三つの「気の持ち方」が問われています。

 その一つは、生きていて良かったという実感があるかどうか。
 二つ目は、人や物に「有難い」という感謝の念が持てるかどうか。
 三つ目は、「自分はやるぞ!」という、やる気があるかどうか。

が決め手だといわれています。
 生き甲斐というのは、しあわせの代名詞といってよく、それを手に入れるためには、これから何かをしようとする仕事、 今自分がかかわっている仕事を天職と心得て、それに最善を尽くして努力することじゃないでしょうか。
 「東へも、西へも行かんと思い、ひと足ずつ運べば必ず行きつくものなり」
これは江戸時代の仮名草紙作者で、深く仏教に帰依した鈴木正三(しょうさん)という人の言葉です。 荒れ地を求め旅する柳絮のバイタリティーに学びたいですね。

 

座禅草(今津町)

座禅草(今津町)

「花信風法話集」
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