花信風法話 「心に花をさかせよう」

永観堂法主 中西玄禮

88 平常心(へいじょうしん)

 ある銀行の頭取は、いつも若い行員に次の五つの言葉を教えておられたそうです。
「おこるな・いばるな・あせるな・くさるな・まけるな」。
行員たちはその言葉の頭文字を取って「おいあくま」と呼びました。確かに、この五つは 人間をだめにする「悪魔」です。そして、その中心は「あせり」でしょう。内心の焦りが外に顕れると「怒り」になります。感情のままに怒りを爆発させて、 せっかく築いた良好な人間関係を崩してしまうこともあります。また、怒られるのはいやだから、周囲の人はその人を敬遠するでしょう。彼はそれをいいことにして、 威張るようになります。また、焦りが内向すると自信をなくして、自分の心を腐らせてしまいます。そして結局、自分で自分に負けてしまうのです。
 私たちは忙しさのために、どうしても焦りがちになります。焦りが多くの事故の原因になっていることを良く知っているはずなのに、 なかなかこれを抑えることができません。心にゆとりのある人は、よく忍ぶことができるはずです。考えることも、待つことも、許すこともできるはずです。

 仏教に「平常心是道」という教えがあります。平常心は「へいじょうしん」または「びょうじょうしん」とも読みます。普段の気持ちがそのまま仏道に通じる、 という意味です。スポーツの試合などで、緊張している選手に対して監督が「平常心で行け!」とアドバイスすると効果があるようです。
 人の心は、形がないだけに積極的になったり消極的になったり、つかまえどころがありません。コロコロ動くから「こころ」というのです。 今年の名古屋場所で39回目の優勝を果たした横綱・白鵬関はインタビューで「いつもと一緒だ、と言い聞かせながらやりきりました」と述べています。 つまり、平常心で勝ち取った優勝といえるでしょう。
 周囲から信頼され、好かれる人というのは、いつも平均して心が和やかで安定しています。 いたわりの心で仲間の苦しみを、共に分かち合ってくれます。なんとなく側にいて欲しいと思える人は、いつも平常心のままで堂々と生きています。
 普段通りの心で、堂々と生きていけたら、どんなにか気持ちがいいでしょうね。

 

蓮の蕾にとまるトンボ

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「花信風法話集」
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