延命地蔵菩薩像

延命地蔵菩薩像


永観堂の所蔵する寺宝をお届けします。展示会などでは間近に見ることの少ない寺宝をお楽しみください。
今回は、作者不詳ですが永観堂に伝わる優しさ溢れる延命地蔵菩薩をお届けします。 なお、表示画像は見やすくするため画像処理を施しています。実際の色合いや明瞭さと異なることがあります。


延命地蔵菩薩像( えんめいじぞうぼさつぞう )


解説
 波の打ち寄せる岩上の蓮華座に、頭光を背負って坐す地蔵菩薩と肉身朱色と白の二童子を配す。地蔵は錫杖を持つが、宝珠を執らずに右膝を立てて思惟の姿とする特殊な像で、この半跏の地蔵は「佛説延命地蔵菩薩経」に説く姿に一致する。この経典は不空訳とされるが、実際には平安末期頃に作られた偽経で、セイタカ・コンガラ両童子と同体とする掌善・掌悪の二童子を延命地蔵の侍者とすることもといており、本図は延命地蔵とニ童子を描いた作例と分かる。同様の遺品が滋賀・浄信寺や広島・西国寺、京都・江西寺にも伝わり、彫刻では兵庫・長楽寺像がこれに相当する。本図の制作は室町後期に降るが、こうした延命地蔵は地蔵信仰と不動信仰の融合を示すもので、真言・浄土双方の寺院に遺品が残るのは興味を引く。

絹本着色
各75.2cm×41.0cm
室町時代